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自己破産の手続きを始める前に考慮すべきこと
1 自己破産準備段階で知っておくべきこと
自己破産は、返済ができなくなってしまった借金等の支払い義務を免れるという強力な法的効果を持つ手続きです。
もっとも、債務者の方に大きな利益をもたらす反面、さまざまな制約なども発生します。
まず、やらなければならないこととしては、次のものが挙げられます。
①家計の正確な把握と見直し
②給与の振込先口座・公共料金等の引き落とし口座の変更
③クレジットカード払いになっている料金等の支払方法の変更
④自宅を持っている場合には引っ越し先を探す
また、やってはいけないこととしては、次のものが挙げられます。
⑤新たに借り入れをすること
⑥財産の売却や贈与
⑦一部の債権者だけへの返済
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 家計の正確な把握と見直し
自己破産の制度が設けられた目的のひとつは、債務者の方が経済的に立ち直れるようにすることです。
自己破産によって免責が許可されたとしても、家計の管理ができず、再度生活のために借入れをせざるを得なくなってしまうようであれば、自己破産をする意味がありません。
そのため、しっかりと家計を把握するとともに、支出を見直して黒字化することが大切です。
自己破産の申立ての際には家計表も提出する必要がありますので、家計表の作成と併せて家計の見直しを行いましょう。
3 給与の振込先口座・公共料金等の引き落とし口座の変更
銀行のカードローンなどで借入れをしている場合、自己破産をするとその銀行の口座が一定期間凍結されます。
弁護士に自己破産を依頼した場合には、銀行が弁護士からの受任通知を受け取った時点で口座が凍結されます。
口座が凍結されてしまうと、給与の引き出しや公共料金の引き落としができなくなってしまいます。
そのため、給与の振込先口座や公共料金の引き落とし口座がある銀行から借入れをしている場合には、給与の振込先および公共料金の引き落とし元を他の銀行の口座に変更しておきましょう。
4 クレジットカード払いになっている料金等の支払方法の変更
クレジットカードで支払いをするということは、一時的に立替えをしてもらうことになるので、新たに債務を作るのと同じことになります。
また、キャッシングをしている場合、自己破産をすると、そのクレジットカードは使えなくなります。
もし家賃や公共料金をクレジットカードで支払っている場合には、銀行振り込み・引き落としなどの方法に変更する必要があります。
また、誤ってクレジットカードを使用してしまうことを防ぐため、ショッピングもキャッシングもしていないクレジットカードは解約をしておくこともお勧めします。
5 自宅を持っている場合には引っ越し先を探す
ご自宅をお持ちの場合、自己破産をすると、ご自宅を失うことになります。
そのため、自己破産をする前から引っ越しの算段をしておく必要があります。
6 新たに借り入れをすること
返済不能になり自己破産をせざるを得なくなってから(弁護士に自己破産を依頼した場合には、その時点から)新たに借り入れをすると、自己破産ができなくなる(正確には免責が許可されなくなる)可能性があります。
さらに、場合によっては詐欺罪とされ、刑事事件に発展することもありますので、絶対に新たに借り入れをしてはいけません。
7 財産の売却や贈与
自己破産は、原則としては債務者の方の財産を換価し、その売却金を債権者への支払いに充てるという手続きが行われます。
自己破産前に財産を売却してしまうと、それが適正価格であったか否かという点や、売却金のどのように使用されたかという点について調査がなされる可能性があります。
贈与についても、基本的には債権者を害する行為であると判断される可能性があります。
財産の売却や贈与があった場合、破産管財人による調査や取り戻しが行われることもあります。
そのため、自己破産をすることになった場合、財産の売却や贈与は基本的に行わないようにしましょう。
8 一部の債権者だけへの返済
自己破産は、すべての債権者を対象とした手続きです。
そして、債権者を平等に扱わなければならないことから、一部の債権者にだけ優先的に返済をすることは禁止されています。
親族や知人からお金を借りていた場合でも同じです。
自己破産をすると親族や知人も返済を受けられなくなってしまいますので、今後の関係等が心配になり、親族や知人にだけは返済したいと考える気持ちはわかります。
しかし、これをしてしまうと、破産管財人から取り戻しがなされたり、免責が許可されないという事態を引き起こす可能性がありますので、絶対にしないようにしましょう。